慶應義塾大学医学部内科学教室(消化器)の中本伸宏准教授、金井隆典教授、田辺三菱製薬株式会社の幸田裕造共同研究員を中心とした研究グループは、慶應義塾大学医学部病理学教室との共同研究により、高脂肪高コレステロール食の長期摂取に起因する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の肝線維化病態が、食事の改善によって回復する免疫学的メカニズムを世界で初めて明らかにしました。研究グループは独自に構築したマウスモデルを用いて、NASHの病態回復において「組織常在型メモリーCD8T細胞」という特殊な免疫細胞が関与していることを発見しました。さらに、このCD8T細胞が線維化の主要な悪玉とされる肝星細胞の細胞死を誘導することで線維化からの回復を促進していることを明らかとしました。
本成果は、これまで明らかにされていなかった肝線維化病態の回復メカニズムを世界に先駆けて示したもので、従来肝線維化進展に寄与すると考えられてきた肝臓内CD8T細胞の新たな働きを提唱するとともに、NASHをはじめとする臓器線維化疾患の新たな治療法や診断薬の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2021年7月22日に『Nature Communications』のオンライン版に掲載されました。