東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻の小関泰之教授、寿景文博士学生、慶應義塾大学医学部薬理学教室のオダロバート特任助教、塗谷睦生准教授、安井正人教授らは、コロンビア大学、清華大学、ハワイ大学との共同研究グループとともに、細胞内生体分子を誘導ラマン散乱(SRS)により検出するSRS顕微法と、蛍光分子の発光を検出する蛍光顕微法を統合し、複雑で多様な細胞を詳細に解析する技術を開発しました。
開発したSRS・蛍光統合イメージングシステムでは、分子振動周波数・蛍光励起波長・蛍光検出波長を高速に切り替えることができ、1秒間に30フレームのラマン画像・蛍光画像を取得しつつ、フレームごとに分子振動周波数・蛍光励起波長・蛍光検出波長を設定することができます。これにより、生体試料の超多重イメージングに要する時間を大幅に削減しました。
本システムを用い、ラマン標識と蛍光標識された生細胞内の8多重イメージングを30秒以内で行うことが可能になりました。これは、従来のSRS・蛍光顕微鏡と比較して20倍以上高速です。また、この手法を用いて、生きた細胞内の小器官が複雑に動き回って相互作用する様子や、多数の細胞内における小器官の空間分布を詳細に調べることに成功しました。
本技術を用いることによって、複雑で多様な細胞内の仕組みをより詳細に解析することができ、生命の仕組みの解明への貢献や、薬剤開発への応用展開が期待されます。
本研究成果は、Elsevier社の科学誌「iScience」のオンライン版(2021年7月27日付け)で公開されました。