慶應義塾大学、国立がん研究センター中央病院および慶應義塾大学病院を中心とする研究グループは、末梢血リンパ球数が免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連副作用発症を事前に察知できること発見しました。本研究は慶應義塾大学薬学部薬学科6年の江上彩映香(えがみ さえか)(研究当時)、同薬学部の河添 仁(かわぞえ ひとし)専任講師、中村智徳(なかむら とものり)教授、国立がん研究センター中央病院および慶應義塾大学病院を中心とする多施設共同研究グループの成果です。
現在、国民の2人に1人はがんに罹患し、3人に1人はがんで死亡する時代となりました。なかでも肺がんは死因の一位であり、年間約7.5万人が亡くなられています。免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブは進行・再発非小細胞肺がんにおける標準治療です。免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連副作用として、皮膚障害、下痢、甲状腺機能障害、間質性肺疾患などがありますが、それらは誰にでも発症し得る副作用で、いつ起こるのかがわかっていません。そのため、「ハイリスク患者」の早期発見とそのマネジメントが非常に重要になります。
本研究では、ニボルマブによる免疫関連副作用発症と末梢血球数は相関するのではないかという仮説を立て、国立がん研究センター中央病院と慶應義塾大学病院の2施設において、進行・再発の非小細胞肺がんの二次治療以降として、ニボルマブ療法を6週間以上行った患者を対象に診療録を後ろ向きに調査しました。対象患者171名のうち、73名(42.7%)が治療開始後6週間以内にいずれか1つ以上の免疫関連副作用を発症しました。各種血球成分の統計解析を行った結果、ニボルマブ療法開始2週間後の末梢血リンパ球数が、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連副作用発症と相関することがわかりました。
以上のことから、末梢血リンパ球数を測定することにより、ニボルマブによる免疫関連副作用発症を予測できることが示唆されました。本研究成果は、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連副作用を事前に察知できる可能性を示唆するものであり、「ハイリスク患者」の早期発見とそのマネジメントに繋がるものと考えております。本研究成果は、2021年5月27日に国際学術誌『Frontiers in Oncology』(電子版)に掲載されました。