理化学研究所(理研)生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームの大伴直央客員研究員(研究当時:慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程)、寺尾知可史チームリーダー、骨関節疾患研究チームの池川志郎チームリーダーらと慶應義塾大学医学部整形外科学教室の松本守雄教授、渡辺航太准教授を中心とした日本側彎(そくわん)症臨床学術研究グループの国際共同研究グループは、大規模な日本人集団の遺伝子多型から思春期特発性側弯症(Adolescent idiopathic scoliosis;AIS)の発症や重症化を予測する手法を新たに開発しました。
本研究成果は、AISの個別化医療や予防医療につながるものと期待できます。
AISは脊椎が三次元的にねじれる原因不明の疾患であり、10歳以降の主に女児が発症します。変形が重度になると手術しか治療法がないことから、早期発見と、重症化する症例の特定が課題となっています。
今回、国際共同研究グループは先の研究で発表したAISの世界最大規模のコホート(日本人女性のAIS患者5,004人、非患者3万7,597人)を使い、遺伝子情報からAISの発症リスクと相関する「ポリジェニック・リスク・スコア(PRS)」を計算し、その数値を基に、AIS発症の予測モデルを開発しました。そして、その予測モデルにBMI(肥満の指標)を組み込むと予測精度が向上しました。また、よりAISの発症に遺伝的に関連性の深い少量の遺伝情報だけを用いることで、予測精度が向上する予測モデルも開発しました。さらに同様の方法により、手術による治療を要する重症化例の予測モデルの作成にも成功しました。
本研究は、科学雑誌『Journal of Bone and Mineral Research』のオンライン版(6月23日付)に掲載されました。