北海道大学大学院理学研究院の嶋田大輔研究員、角井敬知講師、慶應義塾大学の鈴木忠准教授、辻本惠専任講師、国立極地研究所の伊村智教授らの研究グループは、南極の昭和基地周辺の海岸から新種の海産センチュウを2種発見しました。
センチュウは糸のような形をした、地球上でもっとも個体数が多いとされる動物です。生鮮魚介類に寄生して食中毒を引き起こすアニサキスや、クジラに寄生する体長8mを超える種など、寄生虫として一般にはよく知られますが、寄生せずに自由生活を営む種(自活性種)が大部分を占め、海域からも多くの種が見つかっています。しかし南極の昭和基地周辺の海産自活性センチュウについては 近年まで全く研究されていませんでした。そこで嶋田研究員らの研究グループは、2015年から昭和基地周辺の海産自活性センチュウの多様性解明プロジェクトを開始、2017年と2019年にそれぞれ1種の新種を学術誌に報告しました。今回の成果は第3弾となる成果で、昭和基地から約20km南に位置するラングホブデ地域の海岸の砂の中から得られたセンチュウ2種について詳細な観察を行ったところ、いずれも未知の種であることが明らかになったため、新種 Odontophora odontophoroides、Parabathylaimus jare として報告しました。
2新種が得られたラングホブデの海岸は、全く波も音もない静謐さで、採集を行った鈴木准教授は「本当に何か生きているのだろうか?」と思いながら砂を掘ったそうです。今回、胴長靴とシャベルで調査可能な、あまり生物の気配がしない1地点から2種も新種が発見されたことから、今後、より広い地域・水深帯で調査を行うことで、多くの未報告種の発見が期待されます。
なお本研究成果は、2021年3月22日(月)にSpecies Diversity誌でオンライン公開されました。