理化学研究所(理研)生命医科学研究センター皮膚恒常性研究チームの松井毅副チームリーダー(研究当時)、葛野菜々子訪問研究員(研究当時)、天谷雅行チームリーダー(慶應義塾大学医学部皮膚科学教室教授)らの共同研究グループは、皮膚表皮細胞の細胞死の過程を明らかにし、新しい細胞死「Corneoptosis(コルネオトーシス)」を提唱しました。
本研究成果は、皮膚の表面にある角層のバリア障害が知られているアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の発症機序の解明に役立つと期待できます。
皮膚の表皮では、表皮細胞が生きていく上で必要な細胞核やミトコンドリアなどが消失(細胞死)し、残った細胞体を利用して、角層(表皮の最外層)が形成されています。しかし、核やミトコンドリアがどのように消失するのかはこれまで明らかにされていませんでした。
今回、共同研究グループは独自にライブイメージング法を開発し、生きたマウスの表皮を観察しました。その結果、角層の内側にある顆粒層細胞の細胞死の過程では、細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)濃度が約1時間上昇した後、Ca2+濃度が高いまま細胞内が酸性化することが分かりました。この酸性化がないと、核の消失が起こらず、正常な角層細胞(Corneocyte)になりません。また、この酸性化のタイミングは、温度感受性カルシウムチャネルのTRPV3タンパク質が制御していることも明らかになりました。
本研究は、科学雑誌『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)』オンライン版(4月23日付)に掲載されます。