慶應義塾大学理工学部の山本詠士助教、東京理科大学理工学部の秋元琢磨准教授、明治大学理工学部の光武亜代理准教授、ポツダム大学ラルフ・メツラー教授らの研究グループは、溶媒中でのタンパク質構造が長期的な相関を有するゆらぎ(1/fゆらぎ)を示すことで、拡散性の大きさにゆらぎが生じることを発見しました。時間経過とともに変化する拡散係数の大きさがタンパク質の大きさの逆数に比例するというストークス・アインシュタインの式を拡張した関係性を明らかにしました。
近年の研究で、分子の拡散性が時間経過とともに顕著なゆらぎを示す異常拡散現象が報告されてきており、古典的な拡散理論では説明できない物理メカニズムの解明に興味が注がれています。本研究により、絶え間なく複雑に形が変化する分子の拡散性のゆらぎは、実効的な分子の大きさに起因するという物理メカニズムが示されました。また、細胞内では様々な生体分子が拡散・相互作用をすることで、細胞の機能が維持されています。タンパク質構造の変化は機能の発現と関連していることがわかっていますが、時間経過とともに変化する構造はタンパク質そのものの拡散性にも影響を与えるという新たな意義が示されました。
本研究成果は、2021年3月23日に米国物理学会誌「Physical Review Letters」に掲載されました。また、当学会が主宰するオンラインマガジンでも、本研究成果が紹介されました。