水は我々にとって最も大事な資源の1つです。将来の生命の持続可能性のために、水の輸送を自在に制御できる技術の開発が世界各国で進められています。慶應義塾大学理工学部の荒井規允准教授、福井大学工学部の古石貴裕准教授および理化学研究所開拓研究本部戎崎計算宇宙物理研究室の戎崎俊一主任研究員の研究グループは、コンピュータシミュレーションによって、水の輸送を行う分子スケールのポンプシステムが可能なことを示しました。
これまで、主にカーボンナノチューブを用いた分子スケールでの水の輸送が提案されてきましたが、それらは濃度差や圧力差によって駆動する受動的な輸送方式でした。本研究で提案したポンプは、チューブ表面に特殊な加工を施すことで、圧力差がない場合や逆の場合(圧力が低いところから高いところへ)でも水を能動的に輸送することができます。本研究で示した方法はこれまでに比べ非常に単純なメカニズムであるため、様々な水輸送技術への応用が可能で、低エネルギーでの人工浄化システムなど持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために有効な装置を実現する可能性を秘めています。
本研究成果は 2021年2月3日(現地時間)にアメリカ化学会誌「ACS Nano」にて公開されました。