慶應義塾大学医学部皮膚科学教室の高橋勇人准教授、天谷雅行教授、米国国立衛生研究所菅野由香博士(Staff Scientist)、ジョン・オシェア博士(Scientific Director)らの国際合同研究チームは、コレステロール代謝に関連した新たな炎症抑制機構を発見しました。
これまでの研究では、免疫系や代謝系に関して、別々に研究がなされ、それぞれの役割が別々に理解されてきました。今回、免疫が脂質代謝を利用して、炎症を収束させる仕組みがあることが分かりました。この基礎研究の成果は、炎症をともなう疾患の新しい治療法の開発につながる成果です。
免疫細胞を含む全ての細胞において、脂質の一種であるコレステロールは細胞の活動に必須な物質です。細胞内のコレステロールが不足すると、コレステロールの合成が活発になり、濃度が適切に維持される仕組みがあります。この仕組みに重要な役割を果たす物質として、コレステロールとコレステロールが酸化されてできるオキシステロールがあります。同じ仕組みは免疫細胞にもあると考えられています。
今回、研究チームは免疫細胞の一つであるCD4陽性T細胞が、25水酸化コレステロール(25OHC)を分泌することを見つけました。25OHCはオキシステロールの一種です。分泌された25OHCは周囲の免疫細胞に作用し、コレステロールの濃度調節機構を介してコレステロール合成機能を弱め、コレステロールの枯渇状態を引き起こしました。その結果、炎症を引き起こす免疫細胞がその活動に必要なコレステロールを確保することができず、細胞死に陥ることで、炎症が収束することを明らかにしました。
本研究成果は2021年10月8日(米国東部標準時)に国際学術雑誌『Science Immunology』のオンライン版に掲載されました。