慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室の大石直樹専任講師と国立病院機構東京医療センター聴覚障害研究室の和佐野浩一郎室長らの研究グループは、聴神経腫瘍に関連して発症した急性難聴に関する多施設共同後ろ向き観察研究(研究が開始される前に収集された情報を用いる研究)により、主な結果として反復再発により難聴の治癒率が低下すること、1年間に25%の患者に再発がみられることを明らかにしました。
また、過去の突発性難聴の報告と比較することにより、聴神経腫瘍に関連する急性感音難聴は「発症年齢が若い」「ステロイド治療により治癒しやすい」「谷型の聴力型が多い」ということが判明しました。その結果から、突発性難聴患者の中で上記3項目に当てはまる場合は、症状が他の病気が原因ではないことを確認するため、特にMRIなどを用いた聴神経腫瘍の除外診断を行うべきであることを提唱しました。
多くの施設の協力を得て、これまでで最多の症例数の臨床データを蓄積することができたことが本研究の成果につながったと考えられます。本研究成果は、2021年1月21日(英国時間)英国ネイチャー出版グループの『Scientific Reports』電子版に掲載されました。