慶應義塾大学医学部医化学教室の加部泰明准教授、末松誠教授および同整形外科学教室の古旗了伍助教らのグループは、マウス脂肪前駆細胞の分化誘導実験と肥満モデルマウスを用いた検討により、ヘム結合性膜タンパク質PGRMC1が脂肪細胞の脂質蓄積を亢進することを発見し、高脂肪食摂取による体重増加や白色脂肪組織の増大に大きく寄与することを発見しました。
慶應義塾大学医学部医化学教室の加部泰明准教授、末松誠教授および同整形外科学教室の古旗了伍助教らのグループは、マウス脂肪前駆細胞の分化誘導実験と肥満モデルマウスを用いた検討により、ヘム結合性膜タンパク質PGRMC1が脂肪細胞の脂質蓄積を亢進することを発見し、高脂肪食摂取による体重増加や白色脂肪組織の増大に大きく寄与することを発見しました。
同グループは2016年に、PGRMC1はさまざまな固形がんに高発現してがん増殖や薬剤耐性に関与することを発見しましたが、正常での生理機能については不明でした。本研究では、脂肪細胞の分化誘導の過程でPGRMC1の発現が誘導され、本分子が脂肪細胞における脂質や糖質の取り込みを増強することにより脂質蓄積を亢進することを明らかにしました。またマウス個体レベルにおいても、高脂肪食によって肥大化した脂肪組織においてPGRMC1が発現上昇し、体重増加と白色脂肪組織の肥大化を促進することが示されました。
これらの成果は、脂肪細胞における脂質と炭水化物の代謝調節を介した肥満の増進においてPGRMC1が極めて重要な役割を果たしていることを示しており、PGRMC1の機能制御を指標とした新規の抗肥満薬の開発や、メタボリックシンドロームへの治療戦略の構築につながる可能性があります。
本研究成果は、2020年9月4日(英国時間)にNature Publishing Group科学誌『Communications Biology』のオンライン速報版で公開されました。