北海道大学大学院医学研究院皮膚科学教室の柳 輝希助教、慶應義塾大学医学部臨床研究推進センターの西原広史教授(兼腫瘍センターゲノム医療ユニット長)らの研究グループは、乳房外パジェット病の腫瘍組織を免疫不全マウスに移植することによって、新規腫瘍モデルを樹立しました。
乳房外パジェット病は高齢者の外陰部などに好発する皮膚がんで、高齢化が進む中で患者数が増加しています。これまで乳房外パジェット病に対する化学療法は未開発であり、また保険適応薬もありませんでした。また実験モデルとしての、乳房外パジェット病由来細胞や癌組織も作製されておらず、化学療法剤の開発などもできない状況でした。
今回移植した腫瘍組織は、元の患者由来腫瘍組織と同様の形態・遺伝子変異を維持しており、乳房外パジェット病の腫瘍モデルになると考えられました。この腫瘍組織に対して種々の抗がん剤を試したところ、乳がんで使用されている抗がん剤が有効である可能性が示されました。さらにこの腫瘍組織では、ゲノム解析の結果、ERBB2という遺伝子に変異があり、その変異に対する分子標的薬(特定の分子を狙い撃ちにする薬剤)も有効であることがわかりました。この新規皮膚がんモデルは、将来の乳房外パジェット病に対する病態解明や新規治療法開発に有用であると考えられます。
なお、本研究成果は、2020年7月28日(火)公開のOncogene誌にオンライン掲載されました。