理化学研究所(理研)革新知能統合研究センター汎用基盤技術研究グループ数理科学チームの桑原知剛研究員と慶應義塾大学理工学部物理学科の齊藤圭司教授の共同研究チームは、量子力学的な多数の粒子系(量子多体系)の情報伝達における新たな物理法則を発見しました。
本研究成果は、量子力学的に力が働き合う多数の粒子が示すダイナミクスに新たな知見を与えるだけでなく、量子コンピュータなど情報処理技術における基本的制約の理解にも貢献すると期待できます。
量子多体系において長距離で働く力は、どんなに遠く離れた粒子間でも瞬時に影響が伝わるため、たとえ素早く減衰したとしても、情報の伝達速度が無限大になる可能性があります。どのような条件で情報伝達速度が有限になるかは「線形光円錐問題」と呼ばれ、物理学における重要な未解決問題でした。
今回、共同研究チームは、量子多体系において長距離力が粒子間に存在するとき、情報伝達速度が有限になる一般的な条件を数学的に導きました。この条件は、数学的には「リープ・ロビンソン限界」で定式化される情報伝達速度の有限性のための条件で定式化されます。また、本研究で与えた条件が線形光円錐問題の最適解であることを証明しました。
本研究は、オンラインオープンアクセス科学雑誌『Physical Review X』に近日掲載予定です。
※7月14日追記
本研究は『Physical Review X』(7月13日付)に掲載され、Viewpointに選ばれました。