慶應義塾大学医学部内科学教室(呼吸器)の正木克宜助教、舘野博喜講師(非常勤)、福永興壱教授、株式会社CureApp(東京都中央区)の佐竹晃太氏、鈴木晋氏らは、ニコチン依存症に対する治療用アプリの大規模多施設ランダム化比較対照試験の結果を発表し、禁煙外来での長期的な禁煙継続率が改善したことを明らかにしました。本治験は、病気の治療を目的とするアプリの治験として国内で初めて計画されたものです。
禁煙外来では禁煙治療薬やカウンセリングによる12週間の標準治療が保険適用となっています。しかし、1年後に禁煙を継続できている方はわずか3割ほどであり、長期的な禁煙継続が課題となっています。
この治療用アプリは、日本の禁煙治療ガイドラインに相当する「禁煙治療のための標準手順書」の治療内容に基づいて開発されました。その独自な機能には、喫煙欲求や禁煙治療薬の副作用が出現した際の対応を、個別化された内容で助言する自動応答チャット機能、禁煙治療のための教育動画コンテンツ配信、自宅で測定する呼気一酸化炭素濃度と連動したデジタル禁煙日記などが含まれます。さらにこれらの情報を主治医が共有することで、診療の質の均てん化や効率化を図りました。
本アプリを治療に導入した群では半年後の禁煙継続率が63.9%、対照群では50.5%と、統計学的に有意な有効性が示され、さらにその効果は1年後まで保たれていました。このような禁煙治療用アプリの長期的な効果を実証した大規模臨床試験の報告は国際的にみても前例がなく、この報告が初めてとなります。
本成果は、今後の禁煙治療の臨床現場において禁煙継続の大きな助力となることが期待されます。本研究成果は2020年3月12日に国際学術雑誌のNature Partner Journalsである『npj Digital Medicine』に掲載されました。
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