慶應義塾大学理工学部の山本詠士助教、オックスフォード大学のマーク・S・P・サンソムらの研究グループは、膜結合タンパク質と生体膜の新たな結合様式を分子レベルで解明しました。
細胞を覆っている細胞膜では、様々な種類のタンパク質や脂質分子が不均一に分布しています。特定のタンパク質や脂質同士が膜上で互いに作用することで、細胞の機能を維持するためのシグナルが伝達されます。細胞内シグナル伝達を担う表在性膜タンパク質の多くは、膜に結合するためのプレクストリン相同(PH)ドメインと呼ばれる構造を有しています。PHドメインが膜に含まれるホスファチジルイノシトールリン脂質(PIP)という脂質分子に結合することで、タンパク質は膜表面に滞在することができます。これまでの研究で、生体膜においてPHドメインに複数のPIPが結合することが報告されてきましたが、このPIPのクラスター化がPHドメインと生体膜の相互作用にどのような影響を与えるのか明らかになっていませんでした。
本研究グループは分子スケールのシミュレーションを行い、PHドメインには複数のPIP結合サイト(親和性が強いサイトから弱いサイトまで)が存在しており、PHドメイン周りのPIP濃度に応じて膜表面でのPHドメインの結合状態や膜との親和性が変化することを見出しました。これにより、生体膜内で形成されるPIPクラスターが膜上でのタンパク質機能を制御し得ることが分子レベルで示唆されました。
本研究成果は、2020年2月19日(現地時間)に米国科学誌「Science Advances」に掲載されました。
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