慶應義塾大学医学部整形外科教室の中島大輔特任助教、名倉武雄特任教授(所属:久光製薬運動器生体工学寄附講座)、中村雅也教授、近畿大学生物理工学部の三上勝大助教、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構量子ビーム科学部門関西光科学研究所の長谷川登主幹研究員らの合同研究グループは、模擬骨を使用した基礎実験にて、人工股関節カップの設置強度を術中評価する技術の原理実証に成功しました。
骨折や転倒などによる運動器疾患は、要介護、要支援の上位認定理由となっており、この疾患に対する治療技術の1つである人工股関節置換術の手術件数は、世界的にも年々増加傾向です。同手術においては、人工股関節カップが術後早期にゆるみ、骨盤から外れてしまう合併症が知られていますが、現在、人工股関節カップの術中設置強度評価は、カップをハンマーで叩いて設置する術者の手の感覚に頼っており、手術中に定量的に計測する技術は存在していません。
今回、本研究チームが開発したレーザー共振周波数解析は、手術中、人工股関節カップにレーザー光を照射しその振動の周波数を測定することで、カップの骨盤に対する「うき」や「剥離」を評価することができます。また、本手法は、患者さんの身体にダメージを与えることなく何度でも評価可能な定量的評価方法です。
今後、この革新的な技術を応用した医療診断機器を開発することで、より安全で確実な人工股関節置換術の実現に大きく寄与するものと期待されます。
本研究成果は11月8日(ヨーロッパ中央時間)、『Sensors』オンライン版に掲載されました。
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