慶應義塾大学医学部産婦人科学(産科)教室の山田満稔専任講師、小川誠司助教(研究当時)(現 那須赤十字病院第二産婦人科副部長)、浜谷敏生専任講師らの研究グループは、国立成育医療研究センターの梅澤明弘副所長、阿久津英憲部長、宮戸健二室長らとの共同研究にて、受精卵からES細胞を樹立する過程で発現する遺伝子Zscan5bを同定し、マウスモデルを用いた検討によりZscan5bが染色体構造を安定させるとともに、体細胞分裂期のDNA損傷修復を介して、ES細胞におけるゲノム安定性に寄与することを明らかにしました。
受精卵から樹立されるES細胞と、体細胞から樹立されるiPS細胞は、いずれも未分化能および多分化能を有し、細胞治療や疾患モデルへの臨床応用が期待されています。しかしながら受精卵および幹細胞に多くみられる染色体異常は、安全な生殖補助医療と再生医療の実現化にとって障壁となっています。
共同研究グループは、Zscan5b遺伝子の機能を喪失させると、体細胞およびES細胞にランダムな染色体異常が引き起こされること、DNA修復遺伝子(Rad51l3、Bard1)の発現が上昇するにもかかわらずDNA損傷修復されないことを明らかにしました。
さらに、Zscan5bがヒストンH1と結合し、クロマチン構造を安定化させるとともに、体細胞分裂過程における DNA損傷修復を介してES細胞におけるゲノム安定化に寄与することを示唆する結果を得ました。
今回の成果は、健全な受精卵の発育や幹細胞の樹立を通して、より安全な生殖補助医療および再生医療の実現に大きく寄与することが期待されます。
本研究成果は、2019年5月30日11時(米国東部時間)に、国際幹細胞学会(ISSCR)の公式科学誌『Stem Cell Reports』のオンライン版に掲載されました。
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