理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター集積バイオデバイス研究チームの田中陽チームリーダー、田中信行研究員、慶應義塾大学理工学部の山下忠紘助教、スイス連邦工科大学チューリッヒ校健康科学技術学部のヴィオラ・フォーゲル教授らの国際共同研究チームは、微小な溝が刻まれたシート上でラットの心筋細胞を培養することで、溝を橋渡しする立体的な拍動組織「心筋ブリッジ」を自発的に形成させ、さらにその特性から“マイクロ心臓”ともいうべき機能性が実現できることを明らかにしました。
本研究成果は、心筋細胞が集まって心臓を形作る際の実験モデルとして、あるいは創薬分野で行われている心毒性試験や薬効試験のための系として、さらには拍動そのものを利用した微小動力源としての利用が期待できます。
今回、国際共同研究チームは、細胞を小さな環境に閉じ込めて培養した場合とそうでない場合では、細胞が異なる振る舞いを示すことに注目しました。シリコーンゴムのシートに深さ0.15mm、幅0.2mmの溝を刻み込んだ構造体を作製し、それを培養皿内に入れて、ラット心筋細胞(大きさ約0.02mm)を7日間培養しました。その結果、心筋細胞が自然と寄り集まり、溝の間に橋のような大きな細胞組織(心筋ブリッジ)が形成されました。さらに、心筋ブリッジの拍動による微細構造のたわみを利用し、その間を満たす培養液を動かすことができました。これら一連の結果により、“マイクロ心臓”ともいうべき機能性が実現されました。
本研究は、オランダの科学雑誌『Sensors and Actuators B: Chemical』のオンライン版(4月18日付け)に掲載されました。
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