理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター神経グリア回路研究チームの毛内拡客員研究員(お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系助教)、平瀬肇チームリーダー、慶應義塾大学医学部の安井正人教授らの国際共同研究グループは、マウスを用いた研究から、脳内のカリウムイオン(K+)の排出(クリアランス)機構を促進することにより、虚血後の脳損傷を軽減する仕組みを解明しました。
本研究成果は、さまざまな脳血管障害に共通して生じる組織損傷のメカニズムの解明とその治療法の開発に貢献すると期待できます。
脳卒中や外傷性脳損傷などの脳血管障害では、多くの場合、障害発生部位だけでなく健康な部位にまで損傷が拡大します。この損傷拡大には、主に脳内の細胞外のK+濃度の急上昇が引き金となることが知られています。
今回、国際共同研究グループは、ノルアドレナリンと呼ばれる神経伝達物質の受容体(アドレナリン受容体)を阻害すると、脳梗塞後の神経保護と脳機能回復の効果があることを見いだしました。そして、脳内の水の動きを調べた結果、アドレナリン受容体の阻害によって、「アクアポリン4」と呼ばれる水分子の透過を担う膜タンパク質のアストロサイトにおける局在が確保され、K+濃度の正常化が促進されることを見いだしました。
本研究は、米国の科学雑誌『Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)』のオンライン版(5月13日付け:日本時間5月14日)に掲載されました。
プレスリリース全文は、以下をご覧下さい。