慶應義塾大学医学部眼科学教室の坪田一男教授、川島素子特任講師、佐野こころ特任助教らの研究グループと精神・神経科学教室の三村將教授、田中謙二准教授らの研究グループは、環境因子とドライアイの関係について共同研究を進めてきました。
このたび、ストレスを与えられたマウスは涙液量が減少すること、遊具を備えた広いケージで複数のマウスを一緒に飼育した「豊かな環境」にいるとストレスによる涙液量減少が見られないこと、またストレスによって減少した涙液量は「豊かな環境」に移すことで回復が早くなることを発見しました。さらにストレスを与えたときと「豊かな環境」にいるときでは、脳由来神経栄養因子(BDNF)の脳における発現量に違いが見られ、BDNFの発現量を抑えたモデルでは涙液量が減少することを発見しました。これらの結果より、環境因子によって涙液量は変化し、涙液量の分泌制御には脳のBDNFが関与している可能性が明らかになりました。
今回の研究成果は、どのような環境にいるかということが脳を介して涙液量の分泌制御に関わっていることを示唆する新しい知見です。今後、本研究を発展させることでドライアイを予防・改善する環境づくりの提案につながることが期待されます。また、ドライアイとBDNFが関連する他疾患(ストレス関連疾患など)との関係性解明も期待されます。
今回の研究成果は、3月4日(グリニッジ標準時)に学際的総合ジャーナル『Scientific Reports』(オンライン版)に掲載されました。
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