慶應義塾大学理工学部化学科の河内卓彌准教授らは、有機分子上の離れた位置において複数の結合を連続的に構築する新たな手法の構築に成功しました。有機分子の合成において新たな結合の構築は最も重要な過程の一つであり、複数の結合を連続的かつ一挙に創り出すことができる、いわゆる「ドミノ型」反応は、高効率的に複雑な有機分子を創出する手法として長年にわたって広く研究されてきました。一般に結合構築は有機分子上に反応活性点を形成し、これらの点をつなぎ合わせることで行われます。また、ドミノ型反応においては一つの結合を構築した後にその近傍に新たな反応活性点を生み出し、これを利用してさらなる結合構築を行うため、連続的に形成された結合どうしは生成物内の近傍に位置することになります。そのため、「離れた位置」で連続的に結合を構築することは極めて困難でした。本研究では、チェーンウォーキングという反応活性点を遠い位置に効率的に移動させられる手法を活用することで、離れた位置で炭素-炭素結合と炭素-ケイ素結合を一挙に構築することが可能となりました。本手法の開発は、連続的な結合形成は互いに近い位置で行うという従来の常識を覆し、有機合成化学に新たな方向性を生み出すことが期待されます。
本研究の成果は、2019年2月12日(現地時間)に、ドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition(アンゲバンテ ヘミー インターナショナル エディション)」のオンライン版で公開されました。
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