慶應義塾大学医学部内科学(消化器)教室の金井隆典教授、中本伸宏専任講師、坂口光洋記念講座(オルガノイド医学)の佐藤俊朗教授らの研究グループは、肝移植以外に有効な治療法が少ない難治性自己免疫性疾患である原発性硬化性胆管炎(PSC)患者の便中に、肝臓内のTH17細胞の活性化を引き起こす3種類の腸内細菌が高確率で存在することを発見しました。この中の1つであるクレブシエラ菌は大腸の上皮に穴を開け腸管バリアを破壊し、腸管の外にあるリンパ節に移行し肝臓内の過剰な免疫応答を誘導することをマウスにおいて示すことに成功しました。さらに、同マウス肝臓で起こるTH17免疫反応は、抗菌薬によるクレブシエラ菌の排除により30%程度に減弱することが示されました。本成果は、腸内の3菌が肝臓の炎症を起こす原因である可能性とそのメカニズムを示したもので、腸内細菌を標的としたPSCに対する新たな治療薬や診断薬の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2019年1月14日(グリニッジ標準時)に国際学術雑誌『Nature Microbiology』のオンライン版に掲載されました。
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