研究成果のポイント
・量子力学が必要となるような非常に小さな対象を操作する際の操作精度について、これまで知られて
いなかった原理的限界が存在することが分かった。
・操作精度を向上させるためには、「操作を行う装置」のエネルギーがその分だけ激しくゆらいでいな
いといけない、というトレードオフの不等式が導かれた。
・近年盛んに研究されている、量子コンピュータなどで用いられる量子デバイスの設計やナノテクノロ
ジーの開発を考える上で、今回の結果は役立つと考えられる。
概要
電気通信大学情報理工学研究科の田島裕康日本学術振興会特別研究員、慶應義塾大学理工学部の白石直人訪問研究員、齊藤圭司教授の研究グループは、量子操作の原理的限界を示すトレードオフ関係式を導出しました。量子力学の効果が顕著になるような非常に小さな対象を精度よく操作しようとする状況において、「操作の精度を高くすること」と「操作を行う装置のエネルギーのゆらぎを小さく押さえること」とは両立せず、操作を高精度で行おうと思うと、操作を行う装置では激しいエネルギーゆらぎが生じてしまうことを、厳密な不等式の形で示しました。この不等式は、量子力学の本質の一つである「不確定性関係」が、量子系の操作に対しても存在しており、それが操作の原理限界を与えることを意味しています。この導出では、最新の量子情報理論の知見が活用されています。今回得られた結果は、一般的な量子力学的操作に対して成立するので、幅広い応用が期待できます。特に量子コンピュータ中の量子デバイスやナノテクノロジーの設計・開発方針を考える上で、今回の結果は役立つと考えられます。
この研究成果は9月14日発行の米物理学会誌「Physical Review Letters(電子版)」に掲載される予定です。
プレスリリース全文は、以下をご覧下さい。