慶應義塾大学医学部内科学(循環器)教室の佐野元昭准教授、白川公亮助教らは、心筋梗塞後の組織修復・補強に重要な免疫細胞(オステオポンチン産生性マクロファージ)を発見し、その分化する仕組みを明らかにしました。
急性心筋梗塞とは、心臓の筋肉に酸素と栄養を送っている冠動脈という血管が急に詰まることで、心筋が壊死してしまう病気です。心筋細胞には再生機能がないため、心筋梗塞部位の心筋が薄くなると心臓は十分な血液を体に送り出せないようになり、やがて心不全と呼ばれる状態に陥ります。これらの状況から、傷害を受けた心臓組織の修復、薄くなった心筋組織の補強を促し、心機能を回復させることが心筋梗塞患者生存率の改善につながると考えられています。
心筋梗塞部位には、さまざまな免疫細胞が集まってきますが、なかでも、白血球の一種であるマクロファージは、破壊された組織の残骸を貪食(どんしょく)し除去した上で、コラーゲンなどの線維組織素材の合成を促して組織を修復・補強する能力があり、創傷治癒にとって重要な役割を担っています。
今回マウスを用いた研究により、壊死組織に集まるマクロファージは「オステオポンチン」という物質を産出することで、破壊された組織の残骸を貪食していることを発見しました。さらに、骨髄から生じた細胞が心筋梗塞部位でマクロファージへと分化して、オステオポンチンを産生する仕組みを明らかにしました。
本研究の成果は、心筋梗塞を起こした組織でオステオポンチン産生性のマクロファージを増やすことにより患者さんが持っている治癒力を高め、心筋梗塞後の組織の修復・補強を促し、心機能を回復させ、心不全の発症を予防する画期的な治療法の開発に寄与するものと期待されます。
本研究成果は、2018年7月2日(月)(米国東部時間)に循環器分野の最高峰ジャーナルである『Circulation』に掲載されました。
※2018年7月3日(火)追記 プレスリリース配信時は6月28日(木)に掲載予定でしたが、7月2日(月)に変更となりました。
プレスリリース全文は、以下をご覧下さい。