慶應義塾大学医学部医化学教室の加部泰明専任講師らは、東京医科大学ナノ粒子先端医学応用講座の半田宏特任教授および株式会社JVCケンウッドとの共同研究により、光ディスク技術とナノビーズ技術を組み合わせた新しい原理によるエクソソーム計測システム“ExoCounter(エクソカウンター)”を開発しました。“ExoCounter”は、特殊な光ディスク上でエクソソームの表面に存在する疾患特有のたんぱく質(表面抗原)と磁性ナノビーズを結合させ、その複合体を光ディスクドライブで検出し、疾患特異的なエクソソームの数を高精度かつ簡便に計測する新たな計測システムです。エクソソームは主として血液中に存在し、さまざまな細胞から分泌される微粒子です。がん細胞から分泌されるがん特異的なエクソソームの検出にあたり、従来必要であったエクソソーム精製等の前処理が不要となり、がん診断等を発展させるものとして期待されます。
本研究では、日本医療研究開発機構のバイオバンク・ジャパン事業における試料を用いた大規模疾患コホート研究として、光ディスク表面上に、がん細胞が分泌するHER2表面抗原を持つエクソソームと磁気ナノビーズを結合させ、その複合体をExoCounterで検出し、がん疾患由来のエクソソームの数の計測を実施しました。その結果、乳がん患者と卵巣がん患者の血清中に、がんマーカーとして知られるHER2を発現しているがん特異的なエクソソームの数が統計的に有意に多いことを初めて明らかにしました。
これらの成果は、エクソソームを指標とした新たながん診断や治療法の開発、がん研究の発展につながることが期待されます。
なお、本研究成果は、2018年7月18日(水)(米国東部時間)に米国科学誌『Clinical Chemistry』のオンライン速報版で公開されました。
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