慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授、神山淳准教授らを中心とする研究グループは、感覚器障害などの症状が現れるCHARGE症候群の原因遺伝子であるCHD7の機能を解析し、CHD7がヒト中枢神経系に存在する神経前駆細胞の正常な性質を維持する遺伝子群を制御していることを明らかにしました。
CHARGE症候群は、CHD7という遺伝子の変異により生じ、目や耳などの感覚器や心臓などに障害が現れる病気です。これまでに、研究グループは先行研究において、CHARGE症候群の症状が胎生期の神経提細胞の異常が要因となって現れることを患者由来のiPS細胞を用いた疾患モデルにより解明しました(2017年11月28日付 本学医学部からのプレスリリース報告)。
CHARGE症候群は胎生期に症状が発生する遺伝性の疾患であり、感覚器の障害に加えて、精神運動発達の遅滞が合併することがあります。これらの障害が生じる過程の観察は困難であるため、今まで詳細な病態解明が進んでいませんでした。今回、研究グループはCHARGE症候群患者由来のiPS細胞を利用し、胎生期の神経前駆細胞を詳細に観察した結果、CHARGE症候群において神経前駆細胞の維持機構に障害があることを見出しました。さらに、この原因となる分子メカニズムも明らかにしました。
今回の成果は、胎生期の遺伝性疾患の原因の一端を解明するもので、CHARGE症候群の中枢神経症状に対する異常を回復させる治療法開発に結びつけることが期待されます。また神経前駆細胞を用い、疾患を再現させることで、この分野の再生医療実現の進展に大きく寄与するものと考えられます。
この研究成果は、2018年2月9日(米国東部時間)米科学誌『Genes & Development』のオンライン版に掲載されました。
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