慶應義塾大学医学部整形外科学教室の武田和樹助教(理化学研究所 統合生命医科学研究センター・骨関節疾患研究チーム)、池川志郎チームリーダー(理化学研究所)らと慶應義塾大学医学部整形外科学教室の松本守雄教授、渡辺航太専任講師ら日本早期発症側弯症研究グループ及び横浜市立大学遺伝学教室などによる共同研究グループは、東アジア人における先天性側弯症(CS:Congenital Scoliosis)の約10%は「TBX6(T-box 6)」遺伝子の変異が原因であることを発見しました。
背骨が曲がる疾患である側弯症のうち、先天的な脊椎の奇形が原因で起きるものをCSと呼びます。発症頻度は1000出生あたり0.5人-1人になります。CSの発症には遺伝的要因が関与すると考えられ、世界中で原因遺伝子の探索が行われてきました。近年、中国人のCSの発症にTBX6が関与しているとの報告がなされています。共同研究グループは、日本人のCSに対して、TBX6遺伝子の解析を行い、中国人のCSで見つかっている変異と同じ変異(TBX6遺伝子の欠失)に加え、今まで報告されたことのない新たな変異を発見しました。すべての変異が、欠失やナンセンス変異やフレームシフト変異といった、遺伝子の機能に重篤な影響を与える変異でした。また、ルシフェラーゼアッセイにより遺伝子の発現量を測定し、比較的軽微な変異と考えられているミスセンス変異でもCSを発症することを新たに発見しました。更に、CSとは別の疾患群と考えられていた、より重篤な肋骨癒合を伴う脊椎異骨症(SCD: Spondylocostal dysostosis)が、TBX6の変異によって発症する一連の疾患群であることを明らかにしました。
本研究は、これまで原因が不明とされてきたCSに対する日本初の大規模な遺伝子解析により、CSの10%がTBX6の変異を原因とするものであることを明らかにしました。今後、TBX6の遺伝子検査により、CSの早期診断、早期治療が可能になると考えられます。
成果は、『Human Mutation』に掲載されるに先立ち、オンライン版(1月5日付: 日本時間1月6日)に掲載されましたので、いつでも報道していただけます。
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