戊辰戦争のさなかの慶応4年5月15日、江戸中が騒然とする中、福澤諭吉は動ずることなくいつものようにフランシス・ウェーランドの経済書に関する講義を続けました。慶應義塾では、世の中にいかなる変化があっても学問教育を尊重した福澤の精神を長く伝えるために、5月15日を「福澤先生ウェーランド経済書講述記念日」として1956年より記念講演会を開催しています。
今年も5月15日(木)、駒村圭吾法学部教授により、「21世紀の"モラル・バックボーン"
-福澤における「自由」「幸福」「蛆虫の本分」-」という演題で三田演説館にて講演が行われ、定員に達したために事前予約が締め切られるほどの盛況となりました。
駒村教授は、「智徳の模範」たれと説いた福澤諭吉の道徳精神と、それを継承した小泉信三の「モラル・バックボーン」について、対照的に考察されました。情報過多の現代は、≪自由であると不幸になる≫時代になったと説明され、21世紀においては、いざという時に「モラル・バックボーン」をもって行動できるかが問われていると述べられました。
駒村教授のユーモアを交えた講演により、会場は時折笑い声に包まれ、聴講者は熱心に耳を傾けていました。また講演終了後は、本年竣工150周年を迎えた重要文化財の演説館を写真に収める姿が数多く見られました。