12月16日(火)、三田演説館にて第714回三田演説会を開催しました。三田演説会とは、“Speech”を「演説」と訳した福澤諭吉が演説を教育の一環として取り入れ、明治7(1874)年に門下生とともに組織した会です。発足当初から慶應義塾生のみならず一般の人々にも公開され、第714回となる今回は、「小幡篤次郎-智徳の人・敢為の人-」というテーマで、慶應義塾福澤研究センター所長・教授の西澤直子君が講演を行いました。
講演では、福澤諭吉の最側近として生涯にわたり行動を共にしながら、その人物像や思想が十分に語られてこなかった小幡篤次郎に焦点を当て、その思想と業績が紹介されました。西澤君は、2005年の小幡没後100年を記念したウェーランド経済書講述記念講演会において、故・服部禮次郎氏とともに著作集刊行の構想を語りました。それから20年、関係者の尽力によって『小幡篤次郎著作集』(全6巻)が刊行に至った経緯を紹介しました。また、小幡が三田演説会創設時の中心人物の一人であった点にも触れ、福澤の補佐役にとどまらない独自の学識と影響力に光を当てました。
続いて、小幡の生い立ちや福澤との出会い、短期間で英学を修めた非凡さが語られました。西澤君は、身分や立場にかかわらず智を共有することこそが小幡の生涯を貫く信念であり目標であったと指摘し、明治初期に数多くの翻訳書を刊行した背景を紹介しました。『天変地異』や『生産道案内』などを例に、ふりがなや挿絵を用いて学問を平易に伝えようとした工夫が示され、小幡が学問を限られた層のものにせず、社会全体へと開こうとしていた姿勢が強調されました。
なお、本講演録は『三田評論』2月号に掲載されます。