5月24日、慶應義塾大学は三田キャンパスにて、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相による講演会「A Feast of Civilisations: The Life and Mind of Toshihiko Izutsu」を開催しました。本講演会には、マレーシア首相府関係者、駐日マレーシア大使館関係者をはじめ、慶應義塾からは土屋大洋常任理事ほか学生・教職員など約130名が参加しました。
講演会冒頭、土屋常任理事は慶應義塾を代表してアンワル首相の来塾を歓迎するとともに、本学の文学部名誉教授であり、哲学者・言語学者・イスラーム学者であった井筒俊彦を記念して、同首相の講演会を実現できたことへの感謝の意を表しました。
アンワル首相は講演の中で、アラビア語にも同族の多言語にも通じ、原文の本質を理解できた井筒俊彦だからこそ成し遂げたコーランの日本語訳を、その偉業の一つとして讃えました。また、井筒が宗教研究で用いた「共感 (empathy)」によるアプローチは、違いを乗り越えるための対話の前提となるものですが、同首相は、「共感」は異なる信仰、民族、政治の間で紛争の絶えない今日の世界においても重要であると述べました。さらに、世界で進む分断と不寛容に打ち勝つグローバル社会を築くために、私たちが井筒の遺産を受け継いで共感と対話を続ける努力が必要であるとして、講演を締めくくりました。
講演に続く質疑応答では、会場の学生からマレーシア人と日本人の共生に関する質問などが投げかけられました。会場の参加者は、終始アンワル首相の言葉に真剣に聞き入っていました。