11月20日(水)、信濃町キャンパスの北里講堂にて、第29回慶應医学賞授賞式が開催されました。慶應医学賞は、卒業⽣である坂⼝光洋⽒(1940年医学部卒)からのご寄付をもとに1996年から慶應義塾医学振興基金によって行われている事業で、医学・生命科学の領域において顕著かつ創造的な業績を挙げ、今後、さらなる活躍が期待される国内外の研究者から受賞者を決定しています。第29回慶應医学賞受賞者の一人、デミス・ハサビス博士は本年のノーベル化学賞を受賞しており、本賞受賞者からノーベル賞受賞者を12名輩出する、国内の大学において他に類を見ない顕彰制度です。
本年は「脳の計算原理に基づく人工知能による医学生物学研究の変革」のテーマによってGoogle DeepMind社Co-Founder兼CEOのデミス・ハサビス博士が、「生殖細胞発生過程の再構築」のテーマによって京都大学高等研究院教授の斎藤通紀博士がそれぞれ受賞しました。
授賞式では、はじめに慶應医学賞審査委員長の佐藤俊朗医学部教授から、学内外の審査委員によって125名の候補者を厳正に審査し、海外、国内各1名ずつ、計2名の受賞者を選出したことが報告されました。次に伊藤公平塾長からハサビス博士と斎藤博士にメダルと賞状が授与され、祝辞が述べられました。続いて、武部新文部科学副大臣、マーガレット・タング駐日英国大使館公使参事官より祝辞が述べられ、最後に両博士が受賞に対する喜びやこれまでの研究の経緯、謝意を語り、授賞式は終了しました。
続いて行われた受賞記念講演で、ハサビス博士は“Accelerating scientific discovery with AI”と題し、深層ニューラルネットワークの科学への応用と、脳の計算原理に基づく汎用人工知能のさまざまな可能性を示しました。“Mechanism and In Vitro Reconstitution of Mammalian Germ-Cell Development”と題した講演で斎藤博士は、生殖細胞発生に不可欠な分子発見とマウスを使った研究への応用の経緯や、不妊や遺伝病の解明につながるヒトの生殖細胞発生メカニズム解明への展望を語りました。講演会は来賓、教職員、学生など200名を超える聴衆が聴き入り、それぞれの講演後に寄せられた複数の質問に両受賞者とも熱心に回答し、活発な議論が交わされました。
また、授賞式の前には慶應義塾大学病院の見学会も行われました。ハサビス博士と斎藤博士は、AI技術を活用したAIホスピタルの施設やサービスの説明を病院スタッフから受け、興味を示す様子がみられました。