12月21日(木)、三田演説館にて慶應義塾の伝統行事である三田演説会が開催されました。第712回の今回は、「ヴィクトリア朝の岩倉使節団」というテーマで、太田昭子名誉教授が講演を行いました。
幕末維新期を経て日本人が海外渡航できるようになり、異文化交流が多様化していった1860~70年代に、使節団は何をどのように獲得・理解し、日本に伝えようとしていたのか。太田名誉教授は、岩倉使節団によるヴィクトリア朝英国での教育視察に焦点を当て、日英双方の視点から考察しました。
太田名誉教授は、まずヴィクトリア朝英国の階級社会の特徴、倫理観、イギリス教育史について解説しました。また、使節団書記官の久米邦武により編纂された『特命全権大使 米欧回覧実記』をもとに使節団メンバーが英国で実際に見たもの、経験したことを紹介。彼らが新しい価値観と主体的に向き合い、生身の体験を「知」へ昇華させた点を評価しました。最後に、自分の生活圏に<居ながらにして>さまざまな情報を得ることができる現代社会に触れ、与えられた情報の取捨選択や咀嚼能力を検討していくことが今後の課題であること、それらを考える上で歴史から学ぶことの重要性を述べ、講演を締めくくりました。
聴衆は太田名誉教授の巧みな語りによりヴィクトリア朝英国への旅へいざなわれ、初冬の演説館内は明治初期の三田演説会を想起させる熱気のある雰囲気に包まれました。
なお、本講演録は『三田評論』2月号に掲載されます。