戊辰戦争のさなかの慶応4年5月15日、江戸中が騒然とする中、福澤諭吉は動ずることなくいつものようにフランシス・ウェーランドの経済書に関する講義を続けました。慶應義塾では、世の中にいかなる変化があっても学問教育を尊重した福澤の精神を長く伝えるために、5月15日を「福澤先生ウェーランド経済書講述記念日」として1956年より記念講演会を開催しています。
今年は5月15日(月)、松沢裕作経済学部教授により、「戦争・立身・ジェンダー -明治日本の基礎過程」という演題で講演会が行われ、定員に達したために事前予約が締め切られるほどの盛況となりました。2019年以来4年ぶりの三田キャンパス三田演説館での開催となった今年の壇上には、フランシス・ウェーランドの肖像も飾られました。松沢教授は、福澤の思想を織りまぜながら、戊辰戦争がもたらした社会の流動化と、それに続く「立身」の時代の様相を、ジェンダー史の観点を交えつつ考察。現代の諸問題にも通じる「人と人との結びつき」を近代日本の有り様からひもときました。
松沢教授の軽快な語り口に聴講者は時折笑顔を見せながら聞き入り、講演後には活発な質疑応答が交わされました。