慶應義塾

J-PEAKS連携大学の沖縄科学技術大学院大学とのコラボレーション・ワークショップ OIST-Keio Showcase Talk Series Vol.11 “Resonance Matters - Micro-Optical Resonators for Quantum, Bio, and Energy Applications”開催

公開日:2026.05.21
広報室

2026年5月11日(月)、慶應義塾大学は、J-PEAKS連携大学の沖縄科学技術大学院大学(Okinawa Institute of Science and Technology, OIST)とともに、「OIST-Keio Showcase Talk Series Vol.11 “Resonance Matters - Micro-Optical Resonators for Quantum, Bio, and Energy Applications”(共鳴の重要性 ― 量子・バイオ・エネルギー応用に向けた微小光共振器)」を開催しました。OISTの「量子技術のための光・物質相互作用ユニット」と、本学理工学部電気情報工学科「田邉フォトニック構造研究室」を中心としたコラボレーション・ワークショップです。微小光共振器(マイクロ光共振器)における最新の研究成果について、特に量子技術およびエネルギー関連フォトニクスへの応用に焦点を当てて議論が展開されました。

会場の様子

開催にあたって、OISTのシーレ・ニコーマック教授より、J-PEAKS事業におけるOISTと本学の連携の重要性が紹介されました。量子技術を支える光・物質相互作用研究の発展に向け、微小光共振器を活用したコラボレーションをさらに深化させ、両校の研究力強化へ繋げていきたいとの期待が示されました。

シーレ・ニコーマック教授(OIST)

まず、本学の田邉孝純教授からは、THz透過および信号処理のための微小共振器周波数コムに関する最先端の知見が紹介されました。田邉フォトニック構造研究室では、光技術を信号処理に用いることによって、究極的な省エネルギーで動作する光集積回路の実現に向けた研究に取り組んでいます。微細加工技術を利用して光と物質の相互作用を究極的に高めることで、微小なエネルギーで動作する光スイッチや、光速を自由に制御可能な光バッファ、さらには光を用いた量子情報処理素子などを実現することを目指しています。

田邉孝純教授(慶應義塾大学)

物理情報工学科の太田泰友教授の研究は、量子光集積回路、磁気ナノフォトニクス、半導体光ツイストロニクス、トポロジカルナノフォトニクスなど多岐に及びますが、今回は主に転写プリンティング技術が切り拓くハイブリッド集積量子フォトニクスの紹介がされました。太田研究室では、半導体ナノフォトニクス構造を中心に、転写プリント法を使った「自在な」異種材料ハイブリッド集積技術の研究を行っています。どんなものでも自由自在に組み合わせてナノフォトニクス構造を作ることができれば、無数にある夢の光技術が実現できます。

太田泰友教授(慶應義塾大学)

物理学科から登壇した藤井瞬専任講師は、二次元材料における動的ひずみにより誘起される現象のイメージングに関する研究紹介を行いました。藤井専任講師は、微小領域における光と物質間の非線形な相互作用を最大化し、未知の物性解明や量子光エレクトロニクスへの応用を志向した研究を展開しています。この発表では、超高Q値シリカマイクロキャビティと二次元材料を組み合わせた非線形光学デバイスについて紹介し、ナノフォトニクス研究の最前線の知見を提示しました。

藤井瞬専任講師(慶應義塾大学)

また、OIST側からは、スタッフ・サイエンティストのクリストフ・ピン博士より、OISTのウィスパリングギャラリー共振器(WGM共振器)を活用した研究紹介がされました。WGM共振器は、優れた光閉じ込め性能と高いQ値を有しており、強力な光–物質相互作用、非線形光学過程、高感度な変換メカニズムを可能にします。これらの特性により、WGM共振器は新たな量子システムのための有力なプラットフォームとなるだけでなく、センシング、周波数変換、フォトニックエネルギーマネジメントといった、エネルギー関連分野への応用においても大きな可能性を有しています。

クリストフ・ピン博士(OIST)

OISTのPh.D. Candidateのモハメド・ジア・ジャラルディーン氏からは、ダイヤモンド中のNV中心(窒素空孔中心)と、薄肉構造を持つWGMマイクロ共振器を組み合わせることによって、光と量子状態の強い相互作用を実現することを目指したキャビティQED(量子電磁力学)の研究が紹介されました。WGM共振器を活用することで、単一光子レベルでの量子制御や高効率な光子変換などの実現を目指しています。

モハメド・ジア・ジャラルディーン氏(OIST)

量子情報物理実験ユニットからは高橋優樹准教授が登壇し、量子フォトニックインターコネクトに向けたモノリシック線形イオントラップへの光マイクロキャビティ集積について発表しました。量子情報物理実験ユニットでは、高度に制御可能な量子系を対象とした研究に取り組みつつ、単一光子を用いた光学的インターフェースを組み込んだイオントラップの開発に重点を置いた研究を実施しています。単一の原子イオンを高Q値の微小光共振器内にトラップすることで、単一イオンと光子を強く結合させることができます。高橋准教授は、そのような強く結合した系における新奇な物理を探索しながら、イオンと光子の結合を利用した機能的な量子デバイスを作り、それらをネットワーク化された量子情報処理に利用することを目指しています。

高橋優樹准教授(OIST)

ランチタイムには、OISTと本学の双方の学生によるポスターセッションも実施され、教職員だけでなく、学生同士の交流も積極的に行われました。さらに、ワークショップ後には、OIST「量子技術のための光・物質相互作用ユニット」のラボツアーも実施され、本学の教員・学生らは、最先端研究設備を活用した研究環境について理解を深めました。

ポスターセッションの様子
ラボツアーの様子

ワークショップ翌日には、両校のリエゾンおよびURAによる「OIST-Keio戦略連絡会議」も開催され、今後の連携強化に関する意見交換が行われました。今後も、J-PEAKS事業による強い紐帯を通して、OISTと本学は日本の研究力強化に貢献していきます。

集合写真