この春、日吉と信濃町、二つのキャンパスで、学生総合センター企画「福澤諭吉先生ゆかりの地を旅する」が開催されました。都倉武之福澤研究センター准教授による案内のもと、さまざまな学部・研究科の学生が参加しました。
福澤諭吉、慶應義塾ゆかりのスポットを巡りながら、知られざる歴史や大切に受け継がれている気風を知るこのツアー。これまでは福澤諭吉が生まれた大阪、子ども時代を過ごした中津(大分県)など全国各地を訪れていましたが、昨年は感染症対策の観点から三田キャンパスをめぐりました。そして今年は、大勢の1・2年生が学び数多くの学生団体の活動拠点でもある日吉キャンパスと、大学病院がある信濃町キャンパスを舞台に開催されました。
3月8日(水)に開催された信濃町キャンパスのツアーは、医学部(創設当時は大学部医学科)の初代学部長、北里柴三郎の名前を冠した北里記念医学図書館からスタートし、予防医学校舎、お社、食養研究所跡地などをめぐりました。北里は福澤に直接師事したことはありませんが、福澤の援助と助言を受けて、自らの研究に邁進しました。慶應義塾に医学部が設けられたのは福澤亡き後のことですが、北里は福澤の恩に報いるべく、医学部の創設に尽力します。参加者は時にユーモアあふれる都倉准教授の解説を楽しみながら、福澤の後押しを糧に医学の発展に尽力した北里の信念と、それを受け継ぎ、発展させてきた信濃町キャンパスの歩みを学びました。
また3月10日(金)には、都倉准教授と阿久澤武史慶應義塾高等学校長による案内のもと、日吉キャンパスのツアーが実施されました。日吉図書館(日吉メディアセンター)前の福澤諭吉像をはじめとするよく知られたスポットはもちろん、普段は立ち入ることのできない場所も回りながら、慶應義塾を語る上では欠かせない人物やできごとについて理解を深めました。この日は、日吉台地下壕保存の会にもご協力をいただき、日吉キャンパスに現存する戦時中に作られた地下壕も見学しました。写真、音声など豊富な資料をもとにした説明に加えて、実際に使われていた地下壕を体感することで、戦時下の生活、学びのあり方について考えさせられる機会となりました。
授業、課外活動、学生生活の拠点であるキャンパスは、普段通い慣れた場所でありながら、そこにかつての学生たちの息吹や、支えてきた人々の苦難と喜び、大切に受け継がれてきた気風が隠されていることに気付く機会は、多くはありません。また、いつもは通わないキャンパスを訪れると、その違いに驚くこともありながら、その基底にある慶應義塾が共有する雰囲気を感じとることもできます。今回のツアーは、キャンパスに散りばめられた痕跡を一つ一つたどりながら、福澤諭吉の唱える「全社会の先導者」たるべく私学の立場から教育・研究を振興するという気概を紐解き、戦災と復興に象徴される困難とその克服の歩みをたどりました。参加者はこのツアーを通して、自らの学生生活の拠点であるキャンパスを見つめ直し、多くの気づきを得る機会になったことでしょう。
学生総合センターは、例年学生限定のイベントを企画し、開催しています。今回参加できなかった方は、ぜひ次回の企画を楽しみにお待ちください。