11月9日(木)、信濃町キャンパスの北里講堂にて、第28回慶應医学賞授賞式がZoomウェビナー同時配信によるハイブリッド形式で行われました。
慶應医学賞は、卒業⽣である坂⼝光洋⽒(1940年医学部卒)からのご寄付をもとに1996年から慶應義塾医学振興基金によって行われている事業で、医学・生命科学の領域において顕著かつ創造的な業績を挙げ、今後、さらなる活躍が期待される国内外の研究者から受賞者を決定しています。本賞受賞者から、2023年にノーベル生理学・医学賞を受賞したカタリン・カリコ博士を含むノーベル賞受賞者を10名輩出しており、国内の大学において他に類を見ない顕彰制度です。
本年は「血管新生の分子基盤の解明と臨床応用」の研究テーマによってカリフォルニア大学サンディエゴ校教授のナポレオン・フェラーラ博士が、「小胞体ストレス応答の分子機構の解明」の研究テーマによって京都大学大学院理学研究科教授の森 和俊博士がそれぞれ受賞しました。イタリア国籍の研究者として初めて慶應医学賞を受賞したフェラーラ博士は、全身に張り巡らされた血管ネットワークの広がり(血管新生)の分子基盤を世界で初めて解明しました。さらにフェラーラ博士は、血管の広がりや動脈などへの分化を説明しうる血管内皮成長因子(VEGF)の働きを抑える中和抗体を開発し、さまざまながんや眼科領域の医療現場で治療効果を発揮しています。また、森博士は、小胞体に異常な分泌タンパク質が蓄積した際、タンパク質の修復が行われる小胞体ストレス応答の分子機構を明らかにしました。森博士の先導的研究により、小胞体ストレス応答の糖尿病、神経変性疾患、心疾患などへの寄与が報告されています。
授賞式では、はじめに慶應医学賞審査委員長の塩見春彦医学部教授から審査報告と受賞者の略歴、貢献内容が紹介されました。審査報告では学内外の審査委員によって134名の候補者を厳正に審査し、海外、国内各1名ずつ、計2名の受賞者を選出したことが報告されました。次に伊藤公平塾長からフェラーラ博士と森博士にメダルと賞状が授与され、祝辞が述べられました。続いて、盛山正仁文部科学大臣、エヴァン・フェルシング在日米国大使館経済・科学担当公使参事官およびエンリコ・トラヴェルサ在日イタリア大使館科学技術担当官より祝辞が述べられ、最後に両博士が受賞に対する喜びやこれまでの研究の経緯、家族への謝意を語り、授賞式は終了しました。
引き続き行われた受賞記念講演会では、金井隆典医学部長の挨拶の後、受賞者による講演が行われました。金井医学部長は挨拶の中で、本授賞式および講演会は寄付者である坂口氏の意志を継いで、医学生を含む若手研究者に刺激を与えるため、あえて医学部がある信濃町キャンパス内で開催していること、ぜひ自身の研究への気づきを得る機会にしてほしいことを語りました。講演会は来賓、教職員、学生など会場、配信合わせて約200名の聴衆が熱心に聴き入り、講演後には学生を含む参加者との活発な質疑応答が行われました。森博士の講演後には、フェラーラ博士からの質問があり、受賞者同士で活発な議論が交わされる場面もありました。
なお、本授賞式の前には、医学部スチューデントアンバサダーによる受賞者へのインタビューが、授賞式後には審査委員と受賞者らによるレセプションがそれぞれ行われました。