11月28日(月)、信濃町キャンパスの北里講堂にて、3年振りの対面開催となる第27回慶應医学賞授賞式が行われました。新型コロナウイルス感染拡大防止のため会場には限られた招待者をお迎えするにとどめましたが、Zoomウェビナー同時配信によるハイブリッド開催となりました。なお、本年より医学賞式典の運営は英語で執り行うこととなりました。
慶應医学賞は、卒業⽣である坂⼝光洋⽒(1940年医学部卒)からのご寄付をもとに1996年から慶應義塾医学振興基金によって行われている事業で、医学・生命科学の領域において顕著かつ創造的な業績を挙げ、今後、さらなる活躍が期待される国内外の研究者から受賞者を決定しています。本賞受賞者からノーベル賞受賞者を9名輩出しており、国内の大学において他に類を見ない顕彰制度です。
本年は「新しい免疫治療戦略としてのCAR-T細胞療法の開発」の研究テーマによってペンシルバニア大学医学部(米国)教授のカール・ジューン博士が、「パンデミック感染症の制圧を目指したウイルス病原性の解明」の研究テーマによって国立国際医療研究センター研究所 国際ウイルス感染症研究センター長の河岡義裕博士がそれぞれ受賞しました。ジューン博士は、CAR-T細胞療法の臨床応用を実現し、がん、感染症などに対する新しい免疫療法の領域を開拓したことが評価されました。CAR-T細胞療法は、従前の治療に反応しない難治性急性白血病に対して画期的な治療効果を示し、世界の多くの国で承認を受け、実臨床の中で定着しています。また、河岡博士は、インフルエンザウイルスを人工合成する画期的な技術を世界で初めて開発しました。インフルエンザウイルスを自由自在に作製することによって、感染、増殖、耐性獲得などの仕組みを分子レベルで明らかにし、新型インフルエンザウイルスに対する新しいワクチンの開発など、パンデミック制圧に向けて幅広く貢献されました。
はじめに、慶應医学賞審査委員長の塩見春彦医学部教授から審査報告があり、学内外の審査委員によって82名の候補者を厳正に審査し、海外、国内各1名ずつ、計2名の受賞者を選出したことが報告されました。次に伊藤公平塾長からジューン博士と河岡博士にメダルと賞状が授与され、祝辞が述べられました。続いて、簗和生文部科学省副大臣、レイモンド・グリーン駐日米国大使館首席公使より祝辞が述べられ、最後に両博士が受賞に対する喜びやこれまでの研究の経緯、研究に関る方々や家族、患者さんへの謝意を語り、授賞式は終了しました。
引き続き行われた受賞記念講演会では、金井隆典医学部長の挨拶の後、受賞者による講演が行われました。来賓、教職員、学生など会場、配信合わせて200名を超える聴衆が熱心に聴き入り、講演後には活発な質疑応答が行われました。
なお、本授賞式の前には、医学部アンバサダーによる受賞者へのインタビューが、授賞式後には審査委員と受賞者らによるレセプションがそれぞれ行われました。