慶應義塾史展示館では秋季企画展「福澤諭吉と『非暴力』-学問のすゝめ150年-」が開催されています。この展覧会は、『学問のすゝめ』初編が明治5年(1872)に刊行されて150年にあたることを記念し、この本が当時の日本人に与えた影響を考えるもので、その一つの例として「長沼事件」を取り上げています。
この事件は、現在の千葉県成田市長沼にあった「長沼」という沼の所有権をめぐり、長沼村と国が争ったものです。長沼に関する権利を一方的に国から奪われた長沼村の人々が困却していたとき、村の代表の一人が『学問のすゝめ』を入手、この本の著者なら我々を理解してくれるに違いないと信じ、東京三田の福澤邸を訪問。福澤による嘆願書代筆の援助などを得ながら、25年以上の長きにわたって国に抵抗し、ついに国は非を認めて村に沼が無償で返還されるに至りました。村では福澤の助言を得ながら、小学校の建設、水産資源保護の検討、生糸生産開始など、学び考えながら様々な生活の工夫を重ねつつ、この危機を乗り越えていきました。
今回の展覧会は、『学問のすゝめ』およびこの事件に関する様々な資料を一堂に会したもので、福澤自筆の嘆願書代筆原稿はもちろん、事件解決後の村の人々と福澤家・慶應義塾との交流に関する資料も展示されています。長沼の人々に伝えられている福澤諭吉を称える歌も、今回歌って頂き会場で流しています。
11月8日には第1回のギャラリートークが開催され、同館副館長都倉武之准教授による説明に、来場者が熱心に聞き入る姿が見られました。
本展覧会は12月17日まで。
12月3日午前には第2回ギャラリートークが開催されます。
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