現在、慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)で開催している「大山エンリコイサム Altered Dimension」展の関連催事として、11月11日(金)、美術家の大山エンリコイサム氏と彫刻家の青木野枝氏によるトーク・イベントが行われました。
慶應義塾の卒業生でもある大山氏は、都市のさまざまな場所に「名前」をかき残していくライティング・カルチャーに影響を受け、そこに表れる文字形体を抽出し、独自に再解釈したモティーフ「クイックターン・ストラクチャー」を多様なメディアを横断させながら展開してきました。2003年には慶應義塾志木高等学校に壁画を残し、また2020年の東別館竣工の際には、三田キャンパス初のクリエイション・スタジオである「KeMCo StudI/O」に、コミッション・ワークを制作しています。
10月17日からKeMCoで開催中の「Altered Dimension」展では、これまで作家が挑んできたライティングの正面性の問題を展開させ、平面と立体の問題、あるいは二次元と三次元の間に生じるゆらぎやブレについて、作家独自の造形思考によるアプローチで新たな表現の方向性を示しています。
トーク・イベントでは、対談相手に彫刻家の青木氏をお迎えし、「Altered Dimension」展についての青木氏のコメントを皮切りに、両作家の生み出す作品に通じる平面からの立ち上がり、「場所」でつくっていくこと、そして素材との関係性についてなど多様なテーマが応答の中で語られました。
今回の展覧会で、「立体性」「三次元性」に改めて向き合った大山氏から青木氏へ、「鉄」という重さのある素材を使って軽やかに見える作品を制作することの絶妙なバランスについての問いかけがあり、長く鉄を扱ってきた青木氏の素材や制作の考え方が言葉にされました。扱う素材や制作技法がまったく異なる二人の作家に通じる浮遊性や拡張性の根底にあるものについて、作家同士の対話のなかから窺い知ることができた機会となりました。
展覧会は12月16日(金)まで開催中。トーク・イベントは後日アーカイヴ配信が予定されています。