2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、キャンパス内外での学生生活は大きな制約を受けました。不自由な状況の中で不安を抱えながらも、感染防止と学業の継続に努めてきた皆さんに対して、心から敬意を表します。
慶應義塾大学は、昨春の政府による緊急事態宣言をきっかけに、キャンパスを一時閉鎖し、授業もオンライン型に切り替えました。その後、安全対策をとりながら教室(自習室)、図書館、食堂、体育館など施設の利用と課外活動の再開を段階的に進め、秋学期には授業も一部対面型を実施しました。
現在、新型コロナウイルスの感染が拡大して再度、政府の緊急事態宣言が発出されており、感染収束への見通しは依然として不透明ですが、2月の一般選抜入試は、受験生が安心して試験に取り組むことができるよう教職員、関係者が一丸となって、感染防止対策や実施体制に工夫を凝らし、キャンパスでの試験を実施することができました。4月には希望にあふれる新たな塾生を迎えることになります。
そこで、2021年度の新学期については、新型コロナウイルス感染状況の推移を注意深く見守りながら、塾生の皆さんがキャンパスに集い、さまざまな学びを十分に体験できるよう準備を進めていきます。
授業については2020年度春学期、急遽、全面オンライン授業に切り替えたことで当初は混乱もありましたが、塾生への通信環境整備の支援、ネットワークの強化や授業支援システム等の整備を行い、オンライン同時双方向型、オンデマンド型など複数の形態で実施することができました。このような経験を通じて、オンライン授業にも、距離と時間の制約からの解放、反復学習や同時双方向の議論が可能となること、また、さまざまな事情でキャンパスへの通学が困難な塾生の学業継続など一定のメリットがあることが明らかになりました。今後は教員と学生の負担軽減など工夫を重ね、対面型とオンライン型のより学習効果の高いハイブリッドな授業形態を模索していきます。
また引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響で修学が困難となった塾生への経済的支援や精神的な不安を抱える塾生へのメンタルヘルスケアの強化に努めます。
大学における学問は教室における授業のみで成果が得られるものではありません。教室の内外で、自ら調べ、自ら考える主体的な学びによってこそ、物事の本質を見抜き新たな真理を発見する力が身につきます。また教員との語らいや仲間とのふれあい、さまざまな課外活動や社会経験によって人格が陶冶され、学問を通じて社会に貢献できる総合的な人間力が養われます。慶應義塾の創立者福澤諭吉は「世の中で最も大切なものは人と人との交わり付き合いなり。これ即ち一つの学問なり」という言葉を残しました。正課と課外を両輪とする学びは慶應義塾の教育の根幹です。
医学部・病院を擁する総合大学として、世の中の不確かな情報に惑わされることなく、科学的な根拠に基づいて感染防止対策を徹底し、新型コロナウイルスの感染リスクを可能な限り回避したうえで、塾生が安心して学術、文化・芸術、スポーツ、国際交流、社会活動等に取り組めるよう準備を進めます。
慶應義塾は1858(安政5)年の創立以来、理念を共有する有志の協力による民間私立の学塾として、塾生(学生)、塾員(卒業生)、教職員からなる社中協力の力で幾多の危機を乗り越え、日本を代表する総合大学に発展してきました。慶應義塾の塾生は、教え導かれるだけの存在ではなく、社中の一員です。一緒に力を合わせてこの危機を乗り越え、慶應義塾の独立自尊の精神と自由で大らかな学問の伝統を守っていきましょう。
春にはキャンパスに皆さんの元気な姿を見られることを楽しみにしています。