戊辰戦争のさなかの慶応4年5月15日、江戸中が騒然とする中、福澤諭吉は動ずることなくいつものようにフランシス・ウェーランドの経済書に関する講義を続けました。慶應義塾では、世の中にいかなる変化があっても学問教育を尊重した福澤の精神を長く伝えるために、5月15日を「福澤先生ウェーランド経済書講述記念日」として1956年より記念講演会を開催しています。
今年はコロナ禍のため、例年より6か月ほど遅れて、12月2日(水)、三田キャンパス西校舎ホールにて、池田幸弘経済学部長により「福澤諭吉と経済という言説:新旧両理念のはざまで」という演題で開催されました。池田経済学部長は、『学問のすゝめ』『福翁自伝』を分析し、簿記の概念を日本にいち早く導入し「経済」という新理念に敏感であったものの、一方で儒教的な倫理観(旧理念)にとらわれ、学者として「経済」から一定の距離を保ちたいという、新旧2つの理念のはざまで揺れ動く福澤諭吉の人物像を描き出しました。
例年は三田演説館を会場にしていますが、新型コロナウイルス感染症対策のため、西校舎ホールにて、距離を取って着席する形式で実施、聴講者は講演に熱心に耳を傾けていました。
なお、講演録は慶應義塾機関誌『三田評論』2月号に掲載予定です。
参考:福澤先生ウェーランド経済書講述記念講演会の動画を公開(2021/01/06)
講師略歴等