戊辰戦争のさなかの慶応4年5月15日、江戸中が騒然とする中、福澤諭吉は動ずることなくいつものようにフランシス・ウェーランドの経済書に関する講義を続けました。慶應義塾では、世の中にいかなる変化があっても学問教育を尊重した福澤の精神を長く伝えるために、5月15日を「福澤先生ウェーランド経済書講述記念日」として1956年より記念講演会を開催しています。
今年は、5月15日(月)、三田演説館にて、阿川尚之名誉教授・同志社大学特別客員教授により、「福澤先生の訳した憲法:アメリカ合衆国という国のかたち」という演題で講演会が行われました。福澤は著書『西洋事情』の中でアメリカ合衆国憲法を翻訳しました。阿川名誉教授は、福澤が南北戦争前後の変革期のアメリカを訪れていたことに触れ、「国のかたち」の変化と憲法制定・改正の関係について考察しました。最後は第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンのゲティスバーグ演説の一節を英語で朗読し、講演を締めくくりました。
当日の演説館は満席で、立見が出るほどでした。阿川名誉教授のユーモアを交えた講演により、会場は時折笑い声に包まれ、聴講者は熱心に耳を傾けていました。また講演終了後は、重要文化財である演説館を写真に収める姿が数多く見られました。
なお、講演録は慶應義塾機関誌『三田評論』に掲載予定です。
講演概要/講師略歴等