-学長として上智大学のアドバンテージはどこにあると思われていますか?
曄道:一言で言えば「オープンな大学」であるということでしょうか。学問の垣根を越えるオープンな教育研究環境が大きな特色であることを強調しておきたいと思います。私自身が研究者として参加している共同研究では経済学や教育学の先生方と組んで、交通インフラが整っていない地域に環境負荷の低い鉄道網を整備する方策について、海外でのフィールドワークを交えて研究を進めてきました。また学外との共同研究にもオープンで、私の研究室ではJR東海と新幹線車両の地震対策などについて長年研究してきました。その中ですでに10人近いJR東海の社会人ドクターを輩出しています。一人の研究者としてこうしたオープンな研究環境をとてもありがたく感じてきました。
-世界に開かれた大学としても、上智大学は日本でもトップクラスですね。
曄道:ありがとうございます。上智大学は世界中に約400のパートナー校があり、コロナ禍前は92カ国から留学生を受け入れていました。慶應義塾大学をはじめとする日本の著名総合大学と比較すると半分以下の規模ですが、このレベルの国際交流を用意できていることは誇るべきことでしょう。ただ、私はその現状に甘んじることなく、グローバルな視点から次のステージへ向かわなければならないと考えています。上智大学はカトリックの大学で、イエズス会という修道会が母体になっています。イエズス会関係だけでも世界に約80の大学があり、アメリカのボストンカレッジ、ジョージタウン大学など各国のトップレベルの大学が名を連ねています。カトリック全体ではさらに多くの大学があり、上智大学はそうしたネットワークの中でさまざまな世界の課題に対応し、次代のグローバルリーダーを育成する教育研究を展開していかなければなりません。なおかつその中で独自のプレゼンスを発揮していくことで、世界中から信頼され、尊敬される大学でありたいと考えています。アジア、それも日本への世界からの期待や関心はまだまだ大きく、英語で学位が取れる上智大学が海外の人々の期待にさらに応えていくために何が必要かを常に考え、実行に移していきたいと思っています。