慶應義塾

ニュースの分析を通じて「社会」のあり方を研究する

執筆者プロフィール

  • 山腰 修三

    社会学研究科 社会学専攻 教授

    山腰 修三

    社会学研究科 社会学専攻 教授

私の専門は、メディア研究、ジャーナリズム研究、マス・コミュニケーション研究と呼ばれる領域です。とくにその中でもニュースを主な分析対象としてきました。ニュースを社会学的に研究する意義はどこにあるのでしょうか。それは、私たちが日常生活の中でニュースを通じて「社会」を確認している点にあります。現代社会で生じるさまざまな出来事――例えば戦争やパンデミック、あるいは政府の政策決定――は私たちの公的・私的な生活に影響を及ぼしますが、多くの場合、私たちはそれを直接経験することはできません。新聞やテレビ、あるいはソーシャルメディアのニュースを介して社会的な「現実」が共有され、それを通じて現代の政治社会は成り立っているのです。

しかしニュースは無色透明なものでも、出来事を鏡のように正確に映し出すものでもありません。ニュースはいわば、社会の利害関心や価値観を反映し、出来事を特定の視点から意味づけるものなのです。そこからニュースがどのように制作されているのか、そして「社会的現実」をどのように表象し、あるいは構築しているのか、という問いが導かれることになります。いわば、社会的な現実の意味づけを可能/不可能にする力学をニュースの分析から読み解くことが、ニュース研究の主要な目的なのです。

さらに近年は、ニュースの生産や流通がソーシャルメディアやプラットフォームの登場などによって根本から変化し、ニュースを研究することがますます複雑になっています。それは、これまでのようにただニュースの内容を分析するだけではこの領域の研究が成立しなくなっていることを意味します。そのためには新たな理論や分析概念が必要になります。このように、日々開拓すべき領域が拡大していることも、ニュース研究の魅力だと言えます。