慶應義塾

過去と現在の往還から教育への問いをひらく

執筆者プロフィール

  • 綾井 桜子

    社会学研究科 教育学専攻 教授

    綾井 桜子

    社会学研究科 教育学専攻 教授

私の専門分野は、教育思想史と呼ばれる分野です。教育思想史をどのように捉えるのかについては諸説ありますが、教育という概念や営みを歴史の文脈に位置づけることによって、教育の自明性を問い、日常のなかで見失われつつある教育の考え方や意味を再発見することに向けられた領域であると言えます。

私たちにとって身近な学校教育は、近代という時代の産物でありますが、近代的な教育の成り立ちやそれが抱えた課題は一様ではありません。私自身は、フランス近代を対象として、知識と人間形成をめぐる考え方はどのように変容し今日に至っているのかについて、大学への進学準備教育と教養形成をともに担っていた「リセ」に着目しながら研究しています。あわせて、生の全体を視野に収めた人間形成を志向する教育の歴史とはどのようなものであったのか、また、教育を学問として問うとはどのような知的営為を意味するのかを、今日の教育学研究の動向に照らして探究することにも関心があります。

現在のグローバル化のなかで教育には急速な変化が求められ、一定の資質や能力を育成することに関心が向けられる一方で、教育への問いは、ある意味、一様になりつつあります。近代教育を成り立たせた歴史を辿ると同時に、近代的な視点では見出しえなかった教育の諸相を発見し、教育の意味を根本から問い直すところに教育思想史のアクチュアリティーがあると言えるのではないでしょうか。