慶應義塾

精神医学の人類学:うつ病、認知症の台頭に見られる「ライフサイクルの医療化」

執筆者プロフィール

  • 北中 淳子

    社会学研究科 社会学専攻 教授

    北中 淳子

    社会学研究科 社会学専攻 教授

精神医学を中心とした、近代においてグローバルに展開された「医療化」の現象について医療人類学の視点から研究しています。特に、20世紀を通じてそれほど問題視されなかった「鬱」が、1990年代以降「うつ病」として病理化され、世界的に大規模な精神医学的介入の対象となった「医療化」現象について考えるために、臨床現場で長年フィールドワークを行ってきました。現在は、ストレスチェック等を通じて、仕事をめぐる日常的苦悩が精神障害として監視の対象となり、老いによる主に認知機能の衰えが「認知症」という病理として捉え直される、ライフサイクルの医療化について調査を行っています。同時に、心理検査や疫学を用いた医療的スクリーニングに基づく新たな管理システムや、都市像の構築の動きに関して、その前提となる人間観や世界観について、人類学的視点から考察しています。「病いの経験」に関して、当事者の視点に根差した科学知を産み出そうとする国際的な動きにも着目し、海外の人類学者・歴史家・医師との交流や共同研究を進めています。