執筆者プロフィール
川畑 秀明
社会学研究科 心理学専攻 教授川畑 秀明
社会学研究科 心理学専攻 教授
私の関心の中心は、人の認知や思考における主観性や価値体験に関する心や脳の働きについて理解することを通して、人間性の根源や本質を多面的に明らかにすることにあります。大学院の博士課程までは、赤ちゃんの視覚、特に視覚的補完という遮蔽された物体の背後にあるモノを知覚できる過程の発達や、成人の視覚情報処理過程について研究をしていました。学位を取得後ロンドン大学に留学し、脳の働きを捉える計測技法を学ぶとともに芸術感性や美の背後にある脳の仕組みを理解する神経美学という研究を始めました。私たちの研究では、美を報酬系という脳のネットワークやドパミンなどの神経伝達物質の働きとして捉えています。現在は、芸術美だけでなく、対人魅力の研究も精力的に行い、抗加齢医学や美容科学との連携も図っています。今後は、様々な神経伝達物質が関与する多様な脳の仕組みやホルモンの働き、免疫系と美の感じ方や美の現れ方との関連も明らかにしたいと考えています。美しさ、魅力、愛情などの人間性の基盤の理解は、これまで文学や哲学のテーマと考えられてきており、その科学的解明は始まったばかりです。日常的なトピックスを問題設定しやすいので取っ付きやすい反面、哲学や美学、芸術史など人文学における諸問題への深い理解と進化や分子生物学、工学などの自然科学からの説明や理論化が必要とされる難しさもあります。美の解明は、国内外の色々な分野の研究者や企業との協働が不可欠な究極的な学際研究であり、常にワクワクドキドキが伴う楽しい探求です。