慶應義塾

「シンボル化の政治学」を構想

執筆者プロフィール

  • 烏谷 昌幸

    社会学研究科 社会学専攻 教授

    烏谷 昌幸

    社会学研究科 社会学専攻 教授

わたしの専門分野は、政治コミュニケーション研究と呼ばれる分野です。二度の世界大戦を経験した20世紀に米国で誕生した学問分野で、当初は戦時プロパガンダ、政治指導者の演説レトリック、選挙キャンペーンの効果などの研究を中心に発展を遂げました。

この研究分野は、20世紀から21世紀へと世紀を跨いで転換する中で、主に3つの点で重要な変化を被ってきたといえます。第一に、インターネットに代表されるメディア技術環境の変化。第二に、言語論的転回と一般に総称される人文・社会諸科学を広く席巻した知的変革。第三に、アメリカにおけるトランプ現象、中国の覇権国家としての台頭、ロシアによるディスインフォメーションの影響拡大など既存の自由民主主義の価値前提を動揺させる現実政治の動き。

これらのインパクトを踏まえながら、政治コミュニケーション研究の枠組みをどう根本的に再構築していくことができるかが現在問われています。わたし自身は政治シンボル論を批判的に再構成し、シンボル化の政治学として再構成することで現代のメディア社会に相応しい政治コミュニケーション研究をつくることができるのではないかと考えています。

政治シンボルの研究を、国旗や政治スローガンなどの狭いテーマに限るのではなく、人間が生物として有する根源的な「シンボル化の欲求」に着眼して、人間社会の中でどのような条件のもとで「強いシンボル」(カリスマ的指導者、衝撃写真・映像、人々の強い感情、欲望を凝縮した言語シンボルなど)が生産され、それがどのように政治的、社会的に利用されていくのか、そのプロセスを詳細に探究する学問をつくりあげたいと考えています。