執筆者プロフィール
平石 界
社会学研究科 社会学専攻 教授平石 界
社会学研究科 社会学専攻 教授
私の研究の中心には、「心」は自然淘汰による進化の産物であるという考えがあります。心理学を学んだことのある方は、人間の心にはさまざまなバイアスがあることをご存知だと思います。バイアスのために人間はしばしば非合理的なことを行います。お金を払ってしまったからというだけの理由で面白くもないビデオを見続けたり(サンクコストの誤り)、あるグループに所属しているというだけで相手を見くびったり(偏見)。こうしたバイアスはなぜ存在しているのでしょうか。人間が進化する過程においては、一見すると非合理的なバイアスにも、良い面があったのかも知れません。私たちの「心の仕組み」に進化的な意味があるのか考えるのが進化心理学です。私はこれまで進化心理学の視点から、内集団びいき・外集団排除がもたらす思考バイアス、他者への信頼とパーソナリティの個人差の進化、指の長さの比を用いての胎内環境と性的指向の関係の検討、公共財ゲームにおける個人差への遺伝と環境の影響といったテーマを扱ってきました。現在は、SNSでの炎上に見られるような、他者への道徳的非難の進化を中心に、道徳性の進化にかんする研究を進めています。加えて近年は、心理学における再現性危機に関連して、進化心理学の古典的知見の追試にも取り組んでいます。