慶應義塾

モノの次元に隠された「人間くささ」を発見する都市の技術社会史をめざして

執筆者プロフィール

  • 近森 高明

    社会学研究科 社会学専攻 教授

    近森 高明

    社会学研究科 社会学専攻 教授

私の学問上のモデルは、W.ベンヤミンとW.シヴェルブシュ、G.ジンメルで、彼らの仕事を範例としつつ、おもに近現代日本の都市環境の変容を、文化社会学、都市空間論、そして技術社会史が重なり合う視座から探究しています。とくにシヴェルブシュの、ごく些末な技術史的事象を扱っているようでいて、そこからより一般的な知覚や想像力のパラダイム転換を導きだす手際に憧れ、さまざまな主題のもとに研究をすすめてきました。たとえばインフラ的技術。街灯、電柱、送電鉄塔、エアコンなど、自明すぎて問いの対象にならないような技術的事象にあえて注目し、その歴史的変遷を紐解いてみると、私たちの生活環境がどのような偶発的条件の積み重ねで成立しているのかがみえてきます。あるいは地下空間の利用。1920年代の地下鉄の導入や高度経済成長期の地下街の急激な増殖など、地下利用の変遷を眺めてみると、人びとを一種のフローとして扱う技術が、いかに都市に埋め込まれてきたかが顕わになります。都市空間にまつわるさまざまな事象を、端的なモノの次元に還元すればするほど、むしろ人間くささが浮かびあがってくる、そのような瞬間をとらえる社会学的な文体を模索したいと思っています。